春嵐に翻弄されて… 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。


 
 



     



我らが三華様がたの通う女学園の入学式受付前へ突然現れたのは、
どうやら他所の高校に通うらしきお嬢さん。
なのに、紅ばら様こと 三木さんチの久蔵さんを知っているような言動を見せ、
スカート姿なことへ驚いたその上、

『シマダ、久蔵様』

などと口走ってくださって。
久蔵さんが、七郎次曰くの“鬼瓦級”でムッとしたほど、
気に入らない苗字の“シマダ”といえば、
まずは浮かぶのが警視庁所属の蓬髪に髭の警部補殿だが、

「あ、ちょっと待ってくださいよ。」

平八が別な何かを思い出したようで。
長テーブルの上に出してあったタブレットを手に取ると
ネットの検索サイトを呼び出し、何やら入力し始める。
高校生に絞った上で、
剣道少年だの、剣道界のホープだのという項目を巻いて検索を掛ければ、
案外あっさりと名前だけなら呼び出せて。
そこから何やらちゃかちゃかと更なる検索や絞り込みを掛け、

「…おや、結構ガードが堅い人ですよ。」

本来ならもうちょっとあれこれ出てきそうなものなのにと、
意外そうに言いつつ、それでもこれでいいかと妥協したらしい結果、
いかにも証明写真ですという顔のみの小さな画像が呼び出されていて。

「SNSとかやってない人みたいですね。
 それにこれも拡大するとたちまち荒れてしまうようなのを故意に上げてるみたいで。」

今時は無駄に画素が多いものや余計な位置情報が乗っかっているのが
いくらでもアップされているのにと。
偶然かそれとも故意なら大した警戒だと言わんばかり、
ちょっと意外そうに…曲者が相手なればこそ関心が出て来たような顔になった平八が、
お待たせしましたと見せてくれたその画像は、

「あ、この人なら知ってる。」

七郎次がまず気がついて、久蔵もうんうんと頷いた人物のもの。

「インターハイや、他にもあっちこっちの大会で優勝を浚ってる、
 剣道の高校生チャンピオンだよね。」

何しろ七郎次もまた剣道に精を出している身だし、
そんな彼女が出る大会には、久蔵や平八も足を運んで応援にあたるので、
こちらの鬼百合さんが必ず残ることとなる表彰式に、
男子の部からやはり毎回顔を並べておいでの人として
自然と覚えてもいたようで。

「この風貌じゃあ忘れろって方が無理な相談ですものね。」
「……。(頷)」

久蔵と同じくらいの長さの金の髪をふわふわと、
坊主頭にもせず伸ばしているだなんて。
いくらイマドキは何かと自由な風潮が当たり前だとはいえ、
剣道の有名どころの大会でというのはさすがに目立ってしまうもの。
どの大会でも優勝者として勝ち残っているからこその奔放に違いなく。
とはいえ、

「…う〜ん。見間違えるほど似てますかねぇ。」

そういや、久蔵殿がこの人と間違えられたらしい呼び止め、何度かあったなぁと、
一緒にいてのことなのだろ、七郎次も思い出すことが幾つかあったようで。
そうであるにもかかわらず、
久蔵くんと久蔵殿、周囲は見分けがつかぬほど似ていると思うようだけれど、
アタシたちには並んでなくとも別人と認証できるよねえと、
判らない方が不思議だという言いようをする。

「ほら、イマドキのクラブとかに行くと、
 どの人も えぐざいるのメンバーとか クラスタに見えるじゃないですか、」
「そうそうvv」

クラブに行くのか、あんたたち?
店の近くを通っただけ?そうでしょうねぇ。
どっちにしたって そんな女子高生はあなた方くらいのものだと思いますが。
(ファンの方すいません。◯KB48でもよかったかな?)
何だか話がどんどんと逸れていきかかるのへ、
心許ない様子で立ち尽くしていたブレザー姿のお嬢さんなのへ、

「このお人と一緒にいてはぐれた、と?」

迷子になったという状況からのやや混乱気味、
端切れのような断片を幾つか口にした彼女さんだったの、
ちゃんと聞いておりましたよと、七郎次がにっこりと笑う。
さぞかし心細かったろにと、眉を下げて同情する彼女ではあったが、

「もしかしてその都立○○高の制服姿で
 この人この周辺を徘徊してるんでしょうか。」

正体が判ればそれへ付随する様々も出てくるというもの。
出身校も記載されていた資料を見、
まして今目の前にいるお嬢さんの制服も知っていると来て、
白百合さんがやや感慨深げな声を出し、

「うわ〜。案内担当班が撤収後でよかったね〜。」

三木さまがコスプレをvvって沸いてるとこだったぞと、
平八がしょっぱそうな顔をしつつ、学園周辺の防犯カメラのアプリを立ち上げる。
それへこの画像をインストールし、認証捜索しようとするつもりでいるらしく、
既にそこまでのシステムが常設で敷かれているところが恐ろしい。
だが、

「…ありゃ。」

何だか妙な声を上げ、画面へ呼び出された地図の上、
妙なポイントが結構な数で表記されているのを白い指先でなぞって見せて。

「物騒なものを抱えたお客様が、多数おいでのようですよ。」

そんな意味深なこと、呟いたひなげしさんだったりする。




     ◇◇


閑静な屋敷町へと連なる緩やかな坂道に立ち、
スマホを手に時間つぶしでもしているように見える青年がいる。

 「……。」

ゲームでもしているものか視線が液晶画面へ落とされたままだし、
ツールを挟むようにして支えている手の親指もしきりと動いているのだが、
平日の午前中にというのがまず不自然だし、
もっと不自然なのは、ここいらは丘の上の女子高へ通うお嬢様がたしか通らぬ地域。
制服姿ではあるものの、
スカートではなくのパンツ姿ということは男子に違いなかろうに、
一体何用でこんな場違いなところにいるものかと…
おっとりしているよに見えても、警戒はそれなりにしておりますよという土地、
本来なればそういう方向で怪訝に思われるところなのだが、

「…おや。」

今も、お家の前の道、
桜やモクレンの花びらが落ちているのを掃きに出て来たらしい奥様が、
そんな人影に一旦は怪訝そうな顔をしかかったものの、
人影の端正な横顔を見るにつけ、ああと何かへ得心なさり、
そのままお掃除を始めてしまわれる。
それは静かな中通りに竹ぼうきがアスファルトを撫でるサリサリという音が加わったが、
それだとて静かさを引き立てるばかりな代物。
不審なはずの男子学生が、
そのまま環境物にとけ込むのじゃないかというほどの寡黙を貫いておれば、

「おはようございます。」

軽やかながら、だがだが小鳥のさえずりよりは存在感のあるお声が立って、
青年がちらと視線をやれば、
ほんの数歩分という近さにいつの間にかセーラー服姿の少女が一人。
此処は日本のはずだが、其方の少女もつややかな金色の髪を引っ詰めにまとめていて、
そばかすなぞには縁のなさそうなしっとりした白い頬に映える、
透き通った水色の双眸が爽やかに瞬いている。
不意に現れ、この空間でちょっぴり違和感があるはずな男の子を前に、
にこやかに笑っておいでのそのお嬢さんは、

「お友達のお嬢さんとはぐれたのでしょう?  彼女はうちの学園で匿っておりますよ。」

というか、あなたがそうと指示したのでしょう?
この界隈であの年頃の女の子が避難するのに一番安心な“シェルター”だからと。
そんな言いようを連ねると、
白い手のひらに薄いツールを載せて差し出し、

「とりあえず、このスマホで確かめてみてくださいな。」

朝ご飯のメニューとか、二人でないと判らないことがあるでしょう?
納得したなら、このジャージに着替えてください、と。
肩から提げていたトートバッグをほらと、
お友達の紅ばらさんに似ているらしい久蔵くんへ示して見せたのだった。




 to be continued. (17.04.13.〜)








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 *チョイと尺が長くなりそうな仕立てです。
  何やら起きそうなという怪しい前振りをさんざん書いておりますが、
  せめて夏休みまでには、この入学式の一日を書き終えたいですね。(とほほ)

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